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【最高裁判例】成年後見申立てと民法158条の類推適用(最高裁平成26年3月14日判決)

スタッフ(2014年9月15日 09:00

<事案の概要>

 亡きAが、その財産の全てを長男であるYに相続させる旨の遺言書を作成後死亡したところ、Aの妻であるXが遺留分減殺請求権に基づき、不動産所有権の一部移転手続きを求めた。YはXの遺留分減殺請求権の行使は、A死亡後1年を経過しており、時効消滅していると主張したが、Xは、1年経過前に、成年後見の申立てをしており、民法158条を類推適用され、時効は停止していると争った。

 1審、原審共に、Yの主張を認め、Xの請求を棄却したことからXが上告。

<裁判所の判断>

 最高裁は、「時効の期間の満了前6箇月の間に、精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にあるに法定代理人がいない場合において(は)、少なくても、時効の期間の満了前の申立てに基づき(時効期間満了後に)後見開始の審判がなされた時は、民法158条の類推適用により、法定代理人が就任した時から6箇月を経過するまでの間は、その者に対して時効は完成しない。」と判示し、原審を破棄、差戻しました。

<コメント>

 民法158条1項は、「時効の期間の満了前6箇月以内の間に未成年者又は成年被後見人に法定代理人がないときは、その未成年者若しくは成年被後見人が行為能力者となった時又は法定代理人が就職した時から6箇月を経過するまでの間は、その未成年者又は成年被後見人に対して、時効は完成しない。」と規定し、成年被後見人等に時効の完成を猶予することを定めています。

 その趣旨は、成年被後見人等は、法定代理人を有しない場合は時効中断措置を執ることができないのであるから、時効完成を認めるのは成年被後見人等に酷であるのでこれを保護することにあります。

 但し、本件のように、時効完成前に後見開始の審判がなされていない場合には、「成年被後見人」とは言えませんので、本件Xに民法158条の適用を認めることはできません。

 そこで、本件のように後見開始の申立てがなされていた場合には、たとえ後見開始の審判がなされていない場合でも、民法158条を類推してこれを適用できないかが争点となりました。

 この点、従前の学説においては、後見開始の要件を充たしている者の保護の見地からこれを肯定する見解が多数でしたが、時効を援用する者の予見可能性の見地からこれを否定する見解もありました。

 最高裁は、「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にあるものの、まだ後見開始の審判を受けていない者についても、法定代理人を有しない場合には時効措置を執ることができないのであるから、成年後見人同様に保護する必要性がある」として、後見開始の要件を充たしながら後見開始の審判を受けていない者にも民法158条の想定する状況下にあると判示しました。この価値判断については異論ないものと思われます。

  他方、後見開始の申立てがなされた時期、状況等によって、民法158条1項の類推適用を認めたとしても、時効を援用しようとする者の予見可能性を不当に奪うものとはいえないとして、時効援用者の利益にも配慮し、結論として、少なくても、本件のように、時効の期間の満了前の申立てに基づき後見開始の審判がなされた時には、民法158条1項が類推適用されるとしました。

 本件に関する結論としては、基本的には異論ないものと思われます。但し、本件とは異なり、後見開始前に申立てがなされておらず、単に後見開始の要件を充たしている場合はどうなるかなど、本論点に関して検討が必要な事案は残されています。

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